源氏物語45帖 「橋姫」より 八宮

八宮慈雨なき都川の音のわが娘や見きな宇治闇の地は

はちのみやじうなきみやこかわのねのわがこやみきなうじやみのちは

 

八宮は桐壷帝の8番目の皇子。光源氏が二の皇子なので、その弟宮になる。

源氏が朧月夜に手を出したことで弘徽殿の女御の逆鱗に触れ、罪を逃れるため須磨に退居したとき、源氏の代わりとして周囲から推されたのがこの八宮である。

八宮自身に権力欲が無くても機を見るに敏な連中が放っておかないのは今も昔も変わりはない。

しかし源氏は復活し、以前より大きな権力者として戻ってきた。

そうなるとまた周りは手の平返し。誰も八宮に見向きもせず完全に忘れられた存在になってしまう。

不幸は魅入られた人間に寄り添うもの、八宮にはその後次々と不幸が訪れる。

北の方を亡くし、都の屋敷は火事になり、建て替える財力も無い。

仕方なく、唯一持っていた宇治の山荘に幼い娘二人を連れて住まうことになった。

当時の宇治は鄙びた山の中で、冬は雪が深く都から行くだけでも苦労するような所だった。住むとなると松林を吹き抜ける風の音や宇治川の轟々たる川音が恐ろしいほどである。

都の人たちにすっかり絶望した八宮は、そんな宇治の地で仏道に専念する。

この幼い二人の娘が大君(おおいきみ)中君(なかぎみ)である。

ちなみに大君は長女の呼び名で、中君は次女の呼び名。三女が居ない場合でも中君と呼ぶ。

 

 

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