1
まだ明けやらぬ遠き富士 恋初めし日よ森の風
うつむく頬に花ゆれて 色さへ見えね忘る宴
まだあけやらぬとおきふぢ こいそめしひよもりのかぜ
うつむくほをにはなゆれて ゐろさへみえねわするゑん
2
帰る千鳥を追ふ夕陽 三保松原の忘れ雨
絶えて音なくも世に生きぬ 遠路清けし恋ぞせむ
かえるちどりをおふゆうひ みほまつばらのわすれあめ
たへてねなくもよにいきぬ ゑんろさやけしこゐぞせむ
3
久能てふ山なを遠路 遥けき道と覚えたり
夢路も逢わね添えぬ世に 流離ひ疲れ憩いせむ
くのうてふやまなをゑんろ はるけきみちとおぼえたり
ゆめじもあわねそえぬよに さすらひつかれゐこいせむ
4
添ふ風温み湾の春 すべてを厭う寝覚めなり
惚れむ想いや岐路に立ち 恋ゆゑ辛し夜明けまえ
そふかぜぬくみわんのはる すべてをいとうねざめなり
ほれむおもゐやきろにたち こひゆゑつらしよあけまえ
5
今は帆を揚げ舟の波 空に消えゆく鳥たちよ
鳴声さへ責めむ移ろひて 知れぬ想いや駿河湾
いまはほをあげふねのなみ そらにきえゆくとりたちよ
こゑさへせめむうつろひて しれぬおもゐやするがわん